抗アレルギー薬と血液脳関門(BBB)の関係性とは?
抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)は、血液脳関門(BBB: Blood-Brain Barrier)と深く関係しています。これは、中枢神経系への影響を左右する重要な要素であり、第一世代抗ヒスタミン薬と第二世代抗ヒスタミン薬の違いを生み出す主な要因となります。
血液脳関門(BBB)とは?
BBBは、脳の毛細血管の内皮細胞が密着結合(tight junction)を形成し、特定の物質の通過を制限するバリアです。これにより、有害な物質や異物が脳内に侵入するのを防ぐ役割を果たします。
しかし、一部の薬剤はこの関門を通過できるため、中枢神経系(CNS)に作用し、副作用を引き起こす可能性があります。
第一世代抗ヒスタミン薬とBBB
第一世代の抗ヒスタミン薬(例:ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、プロメタジンなど)は、脂溶性が高く、BBBを通過しやすい特徴があります。その結果、中枢神経系に作用し、以下のような副作用を引き起こします。
第一世代抗ヒスタミン薬の副作用
- 眠気(鎮静作用)
- 集中力の低下
- めまい
- 抗コリン作用による口渇、尿閉、便秘
- せん妄(高齢者では特に注意)
このため、第一世代抗ヒスタミン薬は乗り物の運転や集中を要する作業をする際には不適とされています。
第二世代抗ヒスタミン薬とBBB
第二世代抗ヒスタミン薬(例:フェキソフェナジン、ロラタジン、セチリジン、エピナスチンなど)は、BBBを通過しにくいように設計されています。
第二世代抗ヒスタミン薬の特徴
- 脂溶性が低い
- P糖タンパク質(P-gp)の基質となる
- BBB通過が抑制される
P糖タンパク質(P-gp)は、血液脳関門に存在するトランスポーターであり、薬剤を脳内から排出する役割を持ちます。
第二世代抗ヒスタミン薬はこのP-gpの影響を受け、脳内移行が抑えられるため、中枢性の副作用(眠気など)が少なくなります。
第二世代抗ヒスタミン薬の利点
- 眠気が少ない
- 日中の活動に影響しにくい
- 高齢者や運転者にも安全に使用可能(※一部例外あり)
ただし、セチリジンやレボセチリジンなどはやや中枢移行性が高く、眠気を引き起こすことがあるため、個々の薬剤ごとの特性を理解することが重要です。
第一世代と第二世代の比較表
特徴 | 第一世代抗ヒスタミン薬 | 第二世代抗ヒスタミン薬 |
---|---|---|
BBB通過 | しやすい | しにくい |
眠気 | 強い | 弱い |
抗コリン作用 | あり | ほぼなし |
作用時間 | 短い(1日2〜3回服用) | 長い(1日1回服用が多い) |
例 | ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン | フェキソフェナジン、ロラタジン、エピナスチン |
まとめ
- 抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)のBBB通過性は、中枢神経系への影響を左右する重要な要素である。
- 第一世代抗ヒスタミン薬はBBBを通過しやすく、眠気や抗コリン作用を引き起こしやすいため、使用に注意が必要。
- 第二世代抗ヒスタミン薬はBBBを通過しにくく、P-gpの作用で脳内移行が抑制されるため、眠気が少ない。
- 高齢者や運転者には第二世代抗ヒスタミン薬が推奨されるが、一部の薬(セチリジンなど)は中枢性の影響が若干残るため、注意が必要。
参考文献


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