みなさま、はじめましての人も久しぶりの人もこんにちは。
薬局薬剤師のゆずまるです
薬局で調剤業務を行っていると、骨粗しょう症の薬を飲んでいる患者は思いのほか多い印象を受けます
骨粗鬆症の薬だけでも何種類も飲んでいる患者も多い
骨の薬だと服薬指導のネタが少なくなってくるなぁ
それに加えて健康サポート薬局として地域啓発活動も大変。骨粗しょう症ネタで何か出来ないかなと思ったのがきっかけです。
今回から何編かに渡って骨粗しょう症の事について書いていきたいと思いますのでお付き合いください
参考文献は2015年のガイドラインを参照しています
まえがき
ある日の薬局
健康サポート薬局を維持するのに必要な地域向けの啓発活動…月1程度で行うのって大変だよね。ネタを探すのがなかなか難しい…
健康イベントを行うにあたってのテーマを探しているゆずまる
なにか良い案件はないだろうか
とりあえずネットでレンタル機器を調べる
おっ!骨密度の測定機器がレンタル出来そうですよ〜
わぁ!やりましたね〜
骨密度測定機人気でなかなかレンタルできないですもんね
ポチッと!これで予約完了!
早速、参加者用の資材を作っていかないとね
トリさん、骨密度の測定会ってやったことある?
無いです
自分もそこまで詳しい訳じゃないからなぁ
でもせっかくレンタルできたし骨粗しょう症についても知っていかないとダメだよね
一緒に勉強していこうか!
はい!頑張ります!
と言うことで測定会を行うには骨のことを理解していないといけない
と言う事で骨のことを調べてみることになりました
骨の役割
骨のことをみなさまは考えたことはありますか?
体の中に存在するものの、普段の生活の上で骨のことを意識する機会なんてほとんどないと思います
子供のころの成長期、骨折したとき、親の介護が必要になったときなど、何かが起きたときに考えるのが一般的なのかなと私は感じております
まずはそんな骨の役割についてお話したいと思います
カラダを支えたり動かしたりする
誰もが感覚的にわかっていることと思いますが骨があることでカラダを支えたり動かしたりすることができます
骨と筋肉が繋がり、関節が支点となることで、足を動かしたり腕を曲げたりすることができます
足や腰の骨折などの骨トラブルによって、寝たきりなどの要介護になってしまうこともあります
65歳以上の介護が必要になった原因の上位に骨折や転倒は入っております
内臓を守る
カラダの中でも最も大切な部分である内臓はとてもデリケートな場所です
ちょっとした衝撃に弱いもので骨は内蔵を守る働きがあります
頭蓋骨は脳を守り、肋骨は肺や心臓を守り、背骨は脊椎神経を守ります
重要な臓器を硬い骨で覆うことで衝撃からしっかり守っています
血液をつくる
骨の中心部にある骨髄には血液の原料となる造血幹細胞が存在します
そこでは赤血球、白血球、血小板が作られています。
カルシウムを蓄える
骨にはカルシウムの貯蔵する役割があります。
カルシウムはからだの中で最も多いミネラルで、大人では約1kgのカルシウムが存在するといわれています
99%が骨や歯に、残りの1%が血液中や細胞に存在します
体の中のカルシウムが少なくなると?骨のリモデリング
血液中のカルシウムの濃度は常に一定に保たれています。
血中のカルシウム濃度が低くなると骨からカルシウムを補給することで、カルシウム濃度を一定に保っております
骨を溶かしてまでも血液中のカルシウム濃度を保とうという働きが体の中に備わっています。
骨は常に骨を溶かす行為(骨吸収)と新しい骨を作る行為(骨形成)を繰りかえしています
骨を溶かす細胞を破骨細胞、骨を作る細胞を骨芽細胞といいます。
約10年をかけてすべて入れ替わるといわれています。
この骨の生まれ変わりことを骨の再構築(リモデリング)と言います。
骨の吸収が骨の形成を上回ると、骨は次第に弱くなり、骨粗しょう症となっていきます。
カルシウムの働き
カルシウムは骨や歯の材料になることは勿論ですが、生命活動を維持していくためにも大切なミネラルになります
体内のカルシウムの役割の例
- 骨や歯の材料となる
- イライラやストレスなどを静め、神経を安定させる
- 筋肉(平滑筋を含む)の収縮に不可欠
- 体内のイオンバランスを正常値に維持する
- 体内の浸透圧を一定に保つ
- 血液凝固促進作用
- 心筋の機能を正常に保つ
- 抗アレルギー作用
カルシウムが不足すると?
体の中のカルシウムは細胞内と細胞外で常に一定の濃度を保っています。
細胞内の濃度は細胞外の1/10000と言われています。
常に一定のカルシウム濃度に保つことで神経伝達物質が分泌されたり、筋肉を動かすと言ったこともスムーズにできるようになります。
そのため、カルシウムが足りなくなると、様々な症状を引き起こすことにも繋がります。
カルシウムが不足してくると現れる症状の例
- 小児のくる病
- 骨粗しょう症
- 心疾患
- 高血圧
- 動脈硬化
- 妊娠高血圧症候群
- 認知障害
- 免疫異常
- 糖尿病
- 肥満
- 軟骨の変性と変形性関節症
カルシウム不足でイライラ?〜カルシウムパラドックス〜
カラダのカルシウムが足りなくなると、副甲状腺ホルモンの働きにより骨からカルシウムが溶かし血液中に溶かし出します
実はカルシウムが足りていないのにカラダのカルシウムが増えてしまうという現象が起こります。
これの現象をカルシウムパラドックスといいます。
〜動脈硬化や高血圧の例〜
血液中のカルシウム濃度が高くなるとカルシウムは血管壁に取り込まれ血管収縮させたり、血管へ沈着(動脈石灰化)し動脈硬化を引き起こすと考えられています
血液の流れが悪くなるため、循環を良くさせようと心臓はより強い力で血液を送り出そうと頑張ります
そのため血圧が上昇し、高血圧になりやすいのです。
また、ホルモンなどの分泌障害が起きたり、筋肉の動きに影響が出たりすることもあるので注意が必要です
カルシウムが不足するとイライラすると言うのはこのカルシウムパラドックスから来ていると考えられています
パラトルモンとカルシトニン
パラトルモン(副甲状腺ホルモン:PTH)とは、副甲状腺という臓器から出るホルモンのことです。
喉のあたりにある甲状腺の裏側に副甲状腺は存在します。
パラトルモンはビタミンD3を活性化しカルシウムの吸収を促進する働きがあります。
血液中のカルシウム濃度が下がると、破骨細胞を活性化させます。
骨からカルシウムを溶かし、血中カルシウム濃度を上げるように働きかけます。(骨吸収)
カルシトニンとは、甲状腺から出るホルモンのことです。
血液中のカルシウム濃度が高くなることでと分泌量が増加、骨形成を促進させます。
パラトルモンとカルシトニンは反対の働きをすることで体内のカルシウムの濃度を一定に保っています。
骨粗しょう症とは?
骨粗しょう症というとどんな認識を持たれているでしょうか
感覚的に骨粗しょう症=骨が弱い状態だと認識はみなさま持たれていると思います
骨粗しょう症は骨折リスクが増大した状態のことと言われています
WHO(世界保健機関)では「骨粗しょう症は、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患である」と定義してます
簡単に言うと、骨が折れやすくなっている状態のこと
骨がボロボロになっていく過程を骨粗しょう症といい、骨折は骨粗しょう症の合併症の1つと言われています
定義としては抽象的な表現で記載されています。わりとアバウトですよね
骨密度と骨粗しょう症〜診断基準〜
どのくらいで骨がボロボロなの?
どのくらいで骨折のリスクが高いの?
定義だけでは骨折のリスクが高いのか低いのか判断がつきにくく、よく分かりません。
骨折のリスクがどれくらいかを判断するために、日本では骨密度測定値を取り入れた骨粗しょう症の診断基準が作成されています
脆弱性骨折がある場合とない場合で2つの基準が設けられています
脆弱性骨折のある例では骨密度が若年成人平均値 (young adult mean:YAM)の 80%未満
脆弱性骨折のない例では YAM の 70%未満を骨粗鬆症とする診断基準と設定されています
脆弱性骨折の経験があると今後も骨折リスクが高いといわれているため少し厳しめの設定になっているようです
そのため、脆弱性骨折のある場合とない場合の2つのカテゴリーにわけて基準ができています
脆弱性骨折とは
脆弱性骨折とはわずかな外力で生じる骨折のこと
骨粗しょう症で最も問題となるのが脆弱性骨折(ぜいじゃくせいこっせつ)です
一般的には立った高さからの転倒を基準とし、それより弱い力で生じた骨折を脆弱性骨折と言います
脆弱性骨折の頻度が高い部位として、背骨(椎体骨折)とふとももの付け根(大腿骨骨折)が多いと言われています
背骨の骨折は、自分の体重に背骨が耐えきれなくなり、気づかないうちに背骨がつぶれて起こる骨折になります。
いくつもの場所に椎体骨折が生じると背中が丸くなり、身長が低くなります。
その結果、姿勢の悪化から内臓を圧迫。呼吸器機能や消化器機能を低下させることもあります
太ももの付け根の骨折(大腿骨骨折)では、1度起こしてしまうと歩行が困難になるため、日常生活動作を最も悪化させる骨折です
場合によっては手術も必要になります
高齢者が身体を動かさなくなれば、身体の筋肉が衰えてしまい、寝たきりとなり、さらに褥瘡(床ずれ)や肺炎などの合併症などを引き起こす原因となります。
骨折すると体を思うように動かせなくなるので高齢者では介護度が一気に高くなることも…特に注意が必要ですね
同じ骨密度でも骨の強さが違う?骨強度について
骨強度とは骨の強さの事を言います。
骨密度の検査で数値がよくても、骨折してしまうことはあります。
同じ骨密度の人でも実際の骨の強さ(骨強度)は異なることがあります。
骨強度の考え方は骨密度と骨質の2つの要因からなりたちます
骨強度は70%が骨密度、残りの30%は骨質だと言われています
イメージで考える骨強度
骨強度だの骨密度だの骨質だの何が違うのかさえもよく分からない
まずはイメージから考えてもらうと分かりやすいかもしれません
鉄筋コンクリートを骨だと思って考えてみましょう
私たちの骨の構造を鉄筋コンクリートで例えると、カルシウムはコンクリートに当たり、コラーゲンは鉄筋(コンクリートに突き刺さっている棒)に当たります。
建物を建てるとき、単にコンクリートをたくさん増やしても頑丈な家にはなりません
コンクリートの内部にある鉄筋を強化することではじめて頑丈な建物ができるようになります。
骨を考えるとき、鉄筋は骨質、コンクリートは骨密度と考えてみるとすんなりはいるかも
骨密度とは
骨密度とは、骨を構成するカルシウムなどのミネラル成分のつまり具合のこと。
骨の単位面積当たりの骨塩量で算出されます。
ミネラル成分をたっぷり含んでいる骨密度の高い骨は隙間も少なくてぎっしり詰まっています
逆に骨密度の低い骨は中身がスカスカでわずかな衝撃でも折れやすくなります。
骨質(こつしつ)とは
骨質(Bone quality)とは骨折への抵抗性を示す骨の総合的な特徴であると定義されています
骨の素材としての質である材質特性と、その素材を元に作り上げられた構造特性(微細構造)により規定されています。
鉄筋コンクリート(上記参照)でいうと、鉄筋の構造(組み方や本数など)や、材質(サビた鉄を使っているか鋼鉄を使っているかなど)によって強度も変わっていきます。
骨質の大半はコラーゲンからできていると言われています
コラーゲンでできているからこそ、しなやかに骨はたわみ、衝撃を柔軟に吸収してくれます。
骨の体積の約50%を占めており、コラーゲンの劣化や減少も、骨粗鬆症につながる原因となります。
骨折のリスク評価ツールFRAX®
骨折のしやすさは人それぞれです
骨折危険因子と呼ばれているものは数多くありますが、じゃあどのくらい骨折しやすいの?というと判断つきにくいものです
WHOでは11個の骨折危険因子よりなる骨折確率算定モデルであるFRAX®(fracture risk assessment tool)を提唱しています。
これにより患者個別ごとにリスク評価を行えることができるようになりました。
評価対象は原発性の骨粗鬆症だけになりますが、原発性骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版でも治療開始基準に取り入れられています
この評価法は40歳以上の方が対象で、今後10年内に予想される骨折するリスクの確率が計算できます。
FRAXの特徴
とりあえず箇条書きで記載
- これから10年間の骨折確率を計算することができる
- 40歳以上の方が対象
- 骨粗鬆症性骨折(Major osteoporotic)15%以上で、薬物療法を検討する必要があり。
- WHOのホームページ上で簡単に利用可能
- 骨密度の測定してなくてもリスク評価が可能
- 質問項目はわずか12項目
FRAXの危険因子〜12の質問事項
FRAX® に用いられている危険因子は以下の通り
- 年齢
- 性
- 体重
- 身長
- 骨折歴
- 両親の大腿骨近位部骨折歴
- 現在の喫煙
- ステロイド薬の使用
- 関節リウマチ
- 続発性骨粗鬆症の有無
- アルコール摂取
- 大腿骨近位部骨密度(任意)
FRAX骨折リスク評価ツールの手順
なるほど。こんなサイトがあったんだ。知らなかった…
FRAXの存在を調べているうちに初めて知ったゆずまる
上手く活用できるなら骨密度測定会やるときに事前アンケートとしてできるかもしれないね
実際に知らなくては何も進まないのでとりあえずやってみることにしました。
サイトに飛ぶとこのような画面になるのでまずは日本を選択する
とりあえず必要な項目を確認する。
感覚的に入力できそうだが判断に迷うところもある。
とりあえず基本事項はの注意点はこんな感じ
年齢は40歳以上でないと入力出来ないらしい
無知で恥ずかしい限りですが、アルコールの単位なんてあまり聞き慣れない表現でピンと来なかった
そして骨密度。大腿骨頸部の骨密度測定したことある人が多いのか少ないのかも分からない…
少なくとも私はない
分からなければ空欄でもいいらしいけど…
なんだか一般の人に出来るのか?
判断に迷う項目は何か所かあるな。やるならカウンセリングは必要かもしれない
とりあえず入力を進めてみることにした
必要事項を入力して、計算するボタンをクリック
2つの項目が表示された。
Major osteoporotic(骨粗鬆症性骨折)とhip fracture(大腿骨近位部骨折)と表記されています。
ここだけ英語…
それぞれこれから10年以内に骨折してしまう可能性(%)が表記されます
15%以上で薬物療法を検討する必要があります。
みなさまも是非試してみては?
あとがき
FRAXは面白いけど個別にやるのは難しいかもしれないね
どうしてですか?
骨密度を測ってもらったついでに、薬局の場でFRAXをやるには時間がいくらあっても足りなくなるかなーって
やってみたけど判断に迷う部分があるからカウンセリングが必要かも。
それにパソコンの準備も必要かも
あと、診断にも使われてるから骨密度測定会とあわせて実施すればかなり良いものになりそうだけど、その分言葉や表現方法は気をつけないとね
薬剤師は診断は出来ないから、疑われるような行為は慎重にならないいけないから
なんだか難しいんですね
とりあえず今の段階でブレないように決めておきたいんだけど
- サクッと出来る測定会
- じっくりと行う測定会
どちらにしたい?
それならサクッとですかね
じっくりだと参加するにも敷居が高くなると思いますし
わかった!
それならターゲットは広く浅くにしようか
気軽に参加してもらう代わりに食生活や日常生活のアドバイスをしっかりと入れていこう
はい!
それなら資料集めますね
あとこの測定会やるなら先生は知っていたほうが良さそうだよね
先生にも一応知らせておこうか
こうして骨密度測定会を実施するための前段階として、大まかな道筋は立てることは出来たのかな?と思います
とりあえず配布資料をしっかりとさせることと門前の先生に骨密度測定会をやるよーってお伝えすること。これが課題になるのかも?
まとめ
骨は絶え間なく作っては壊してを繰り返すこと
骨の強さは骨密度と骨質から成り立つこと
骨粗鬆症は骨折危険性が増大した状態であること
個人の骨折危険因子を考えつつ個別に評価すること
以上です
次回は開催に向けての準備編です。
はたしてゆずまるはいいものを作り上げられるか?
興味あれば次編もぜひ読んでみて下さい
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