桜を使った薬や製品には何がある？薬剤師が詳しく解説！
春の象徴である「桜」は、私たちの生活に彩りを与えるだけでなく、実は医療や美容の分野でも活用されていることをご存じでしょうか？
本記事では、桜を原料とした漢方薬や健康食品、美容製品などを薬剤師の視点で詳しく解説します。
桜のどの部分が薬や製品に使われているの？
桜の中でも、医療・美容用途に用いられるのは主に以下の3つの部位です。
- 樹皮（桜皮：おうひ）…漢方薬として利用
- 花（特にソメイヨシノ）…化粧品やサプリメントの成分として利用
- 葉（桜葉：おうよう）…食品や香料に利用
特に「桜皮」は、日本薬局方にも収載されている伝統的な生薬のひとつであり、炎症や咳などに効果があるとされています。
桜皮（おうひ）を使った漢方薬には何がある？
「桜皮（おうひ）」は、バラ科のサクラ属植物（ヤマザクラなど）の樹皮を乾燥させたもので、以下のような効能があります。
主な作用
- 鎮咳作用
- 抗炎症作用
- 解毒作用
桜皮が含まれる代表的な漢方薬
| 漢方薬名 | 用途 | その他の成分 |
|---|---|---|
| 桜皮湯（おうひとう） | 咳・痰・気管支炎 | 桔梗、杏仁、生姜など |
| 清上防風湯（せいじょうぼうふうとう） | にきび、吹き出物 | 黄連、連翹、柴胡など |
これらは主に中医的観点で「熱」や「炎症」を取り除く処方であり、皮膚や呼吸器のトラブルに用いられます。
桜の花エキスは美容製品でどう使われているの？
桜の花、特にソメイヨシノから抽出されるエキス（サクラ花エキスやサクラ葉エキス）は、近年「植物由来の美容成分」として注目されています。
美白や抗炎症といった効果が期待され、さまざまなスキンケア製品に配合されています。
桜の花エキスの主な効果
- 美白効果：メラニンの生成を抑制し、シミやくすみを予防
- 抗炎症作用：肌荒れやニキビを防ぐ効果
- 抗酸化作用：紫外線や加齢によるダメージを軽減
- 保湿効果：肌にうるおいを与え、乾燥から守る
これらの効果から、サクラ花エキスは化粧水、乳液、美容液、クリーム、ボディソープなど幅広く使われています。
桜の葉（桜葉）は香料や食品にも使われている？
桜の葉、特に「オオシマザクラ」の葉は、和菓子などの食品や香料の原料として古くから利用されています。最も有名なのは「桜餅」に巻かれた葉で、あの独特の香りは葉から抽出される成分によるものです。
桜葉に含まれる有効成分と香りの正体
桜葉に含まれる特徴的な香りの主成分は「クマリン（Coumarin）」です。
これは天然の芳香成分で、以下のような特徴があります。
- 甘くて少しスパイシーな香り
- リラックス効果（アロマテラピーで利用）
- 防腐・抗菌作用（食品保存にも応用）
このクマリンが、桜餅や桜のお茶、桜風味のリキュールなど、さまざまな「桜フレーバー商品」に使われています。
桜葉の食品利用例
| 製品名 | 使用部位 | 用途 |
|---|---|---|
| 桜餅 | オオシマザクラの塩漬け葉 | 風味付け・食用 |
| 桜茶 | 桜花＋葉（塩漬け） | 祝いの席の飲み物 |
| 桜リキュール | 花・葉の抽出液 | カクテルや洋菓子の香り付け |
| 桜シロップ | 花・葉のエキス | ドリンクやスイーツに |
これらの製品は、春の季節感を楽しむだけでなく、食用としての安全性も十分に確保された加工が施されています。
桜由来の成分に副作用はある？安全性は？
桜は古くから食用・薬用・美容用に使われてきた植物ですが、成分によっては注意が必要なものも存在します。
特に「クマリン」などの天然芳香成分は、使用量や体質によって影響を及ぼす可能性があります。
クマリンの安全性と注意点
桜葉や桜花の香り成分「クマリン」は、過剰摂取によって肝機能障害を引き起こす可能性があると報告されています。
ただし、日常的な食品（桜餅や桜茶など）に含まれる量はごくわずかであり、健康被害を起こす可能性は極めて低いとされています。
- 食品での使用：塩漬け加工や香料利用であり、摂取量は微量
- 医薬品との違い：医薬品のクマリン系薬剤（ワルファリンなど）とは全く別物
- アレルギーの可能性：まれに植物アレルギーの人で接触性皮膚炎の報告あり
そのため、以下の方は注意が必要です。
- 肝疾患がある方
- ワルファリンなどの抗凝固薬を使用中の方
- 香料アレルギーのある方
化粧品での桜エキスの安全性
桜の花エキス（サクラ花エキス、ソメイヨシノ葉エキス）は、日本でも「化粧品表示名称」として安全性評価を受けており、次のような点が確認されています。
- 皮膚刺激性が少なく、敏感肌でも使用しやすい
- 長期使用による蓄積性の毒性はなし
- 多くの自然派化粧品ブランドでも採用
ただし、どんな天然成分でも「肌に合う・合わない」は個人差があります。
初めて使う製品は、必ずパッチテストをしてから使用しましょう。
桜由来成分の効果は科学的に証明されているの？
桜に含まれる成分の薬理効果については、日本を含む複数の研究機関や大学によって、一定の科学的根拠が示されています。ここでは、信頼性のある文献・研究から得られたデータを紹介します。
1. 桜皮（おうひ）の抗炎症・鎮咳作用
桜皮には「プルネチン（prunetin）」や「イソフラボン類」が含まれており、これらには以下のような薬理効果が報告されています。
- 気道炎症抑制作用
- 気管支収縮抑制作用（＝咳を和らげる）
- 皮膚の炎症反応を軽減する抗サイトカイン作用
これらの作用により、桜皮を含む漢方薬がにきびや咳・皮膚炎に応用されている理由が科学的にも裏付けられています。
2. 桜花エキスの美白・抗酸化作用
ソメイヨシノ葉エキス（サクラ葉エキス）については、以下のような研究結果があります：
- メラニン生成酵素「チロシナーゼ」の活性を抑制 → 美白効果
- 活性酸素（ROS）を除去 → 肌の老化防止
- 皮膚細胞の炎症マーカー抑制 → 敏感肌や炎症肌にやさしい
これらは国内の化粧品メーカーや大学（例：近畿大学、静岡県立大学など）によって報告されており、特に「肌にやさしい美白成分」として注目されています。
3. クマリンの鎮静・リラックス作用
クマリンは、アロマテラピー分野でも研究されており、中枢神経系に作用して「気分を安定させる」「眠りを促す」などのリラクゼーション効果が期待されています。
薬剤師が知っておくべき桜製品の取り扱いポイント
薬局やドラッグストアでは、春季限定で桜をテーマにしたスキンケア製品や健康食品が多く並びます。
薬剤師としての視点で、以下のような対応を意識することが大切です。
1. 成分表示の確認
- 「サクラ花エキス」「ソメイヨシノ葉エキス」「桜皮エキス」などは、それぞれ効能が異なる
- 保湿？美白？鎮咳？何に対する作用を意識しているか、商品ごとに確認
2. アレルギー歴の確認
特に植物アレルギーの既往がある方には注意喚起を。クマリンへの過敏反応や、香料成分による接触性皮膚炎の可能性があります。
3. 季節商品としての販売戦略
- 春限定商品のため、「早めの購入」を促す声かけが有効
- 贈り物需要（卒業・入学・母の日）に合わせた陳列やポップも効果的
まとめ
桜は私たちに春の訪れを告げてくれる美しい花ですが、実はそれだけではなく、薬用・美容・食品など幅広い用途で活用される有用植物です。
薬用では「桜皮（おうひ）」が漢方薬として皮膚炎や咳に使われ、美容分野では「桜花エキス」や「桜葉エキス」が美白・保湿・抗炎症・抗酸化などの効果で注目されています。
さらに、クマリンのリラックス効果を活かしてアロマや食品の香り付けにも使われており、季節の変化を楽しみながら健康・美容に役立てることができます。
薬剤師としては、桜由来の製品に含まれる成分の正確な知識を持ち、アレルギーや副作用リスクへの配慮、適切な商品提案を行うことが大切です。
よくある質問（Q&A）
Q1. 桜皮が入っている漢方薬はどこで買えますか？
ドラッグストア、薬局、漢方専門店、またはネット通販で購入できます。製品により配合量や適応が異なるため、薬剤師に相談するのがおすすめです。
Q2. 桜花エキスのスキンケアは敏感肌でも使えますか？
多くの製品は低刺激処方で敏感肌にも対応していますが、個人差があるため、パッチテストを行ってからの使用が安心です。
Q3. クマリンって体に悪いの？
高濃度・大量摂取は注意が必要ですが、桜餅など日常食に含まれる量では心配いりません。過剰に摂らないよう注意すれば、安全に楽しめます。
Q4. 桜の香りにリラックス効果があるって本当？
はい、本当です。桜葉に含まれるクマリンには、神経を落ち着かせる作用があり、アロマや入浴剤にも活用されています。
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